Web Benchのスコアの読み方:8つのカテゴリーとシングル・マルチコアの違い
Web Benchの総合スコアと8つのカテゴリーが何を測っているのか、CPUのマルチコアスコアがシングルコアより大きく高くなる理由、強み・弱みの表示と棒グラフの見方、端末を比較するときの注意点をまとめました。
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Web Benchで測定が終わると、大きな総合スコアが1つと、8つのカテゴリーの棒グラフが表示されます。数字が高いほど速いことは直感的にわかりますが、「マルチコアの数字がシングルコアの10倍近くあるのは普通なの?」「メモリのスコアが低いのはPCが遅いから?」といった疑問がすぐに浮かびます。この記事では、結果画面の数字の読み方、各カテゴリーが実際の使い心地とどう結びつくか、そしてスコアを比較するときに気をつけたい点を順に説明します。
総合スコアは何を合わせた数字なのか
総合スコアは、カテゴリーごとのスコアを加重幾何平均でまとめた値です。個々のテストは3回測定して中央値を取り、基準値と照らしてスコアに換算します。同じカテゴリー内のテストのスコアを均等に平均してカテゴリースコアとし、そのカテゴリースコアを重み付きで平均したものが総合スコアになります。スコアは高いほど高速です。
このスコアは、満点が決まっているテストの点数ではなく、すべての測定値を同じ方法で換算した相対的な目盛りです。高いほど速いという意味であり、特定の数字に合格ラインがあるわけでもありません。ただし、スコアの計算式はバージョンによって変わることがあるため、比較するときは同じ計算式バージョンの結果どうしを比べてください。CPUマルチコアは、後述するようにコアの活用倍率の分だけシングルコアよりはるかに高く出ます。
カテゴリーごとの重みは次のとおりです。重みが大きいカテゴリーほど、総合スコアに強く反映されます。
- CPUシングル 17%、CPUマルチ 17%
- メモリ 12.75%、GPU描画 12.75%、GPU計算 12.75%
- ブラウザー 8.5%
- ストレージ 4.25%
- AI推論 15%(任意の項目で、測定しない場合は総合スコアから除外されます)
幾何平均を使っているため、1つのカテゴリーだけが突出して高くても総合スコアは大きく上がりません。逆に、1つのカテゴリーが極端に低いと、総合スコアも目に見えて引き下げられます。一部に偏った端末より、バランスの取れた端末が有利になる仕組みです。また、端末やブラウザーが対応していない項目はエラーではなく自動的に除外され、測定できたカテゴリーだけで総合スコアを計算します。
CPUシングルとマルチ:コア1つの瞬発力と、コア全体の底力
シングルコアのカテゴリーは、1つのコアが実際の処理をどれだけ速くこなせるかを測ります。テキスト処理、JSONの解析、圧縮、ハッシュ、画像処理、ソート、経路探索、物理シミュレーション、レイトレーシング、線形代数などです。単位は1秒あたりの演算回数で、数字が大きいほど同じ時間で多くの処理をこなしたことになります。
日常では、1つのことを順番にこなすときのサクサク感に対応します。ページの読み込み速度、タップへのアプリの反応、普段の文書や表計算の作業などは、シングルコアのスコアに沿う傾向があります。作業を1列で順に処理するプログラムは、遊んでいるコアがいくつあっても、1つのコアの速度に制限されるからです。
「コアの数は多いのに、ときどきもたつく」というよくある不満の答えは、たいていこれです。シングルコアのスコアが低いと、コア数が立派に見えても、1つ1つの作業で待たされることがあります。
補足です。AES-GCMやDeflateのようにブラウザーAPIに依存するテストは、そのAPIが使えない場合はスキップされ、残ったテストでスコアを計算します。
では、なぜマルチコアはシングルコアの数倍も高くなるのでしょうか。マルチコアのカテゴリーは、同じ種類の処理を複数のWorkerに分け、コアが力を合わせたときのスループットを測ります。動画のエンコード、大きなファイルの処理、多数のタブやアプリを同時に開く重いマルチタスクで、その差を実感します。
数字の大きさには、多くの人が驚きます。現在の計算式(v4)では、マルチコアの各テストの基準値は、対応するシングルコアのテストの基準値、つまりコア1つ分のスループットです。そのため、マルチコアのスコアは、おおよそシングルコアのスコアにコアの活用度を掛けた値になります。コア数の多い端末は、シングルよりマルチのほうがはるかに高いスコアになるのが自然で、水増しされているわけではありません。結果画面の「マルチコアは◯倍高速」という表示が、まさにこの倍率を示しています。
利点は、マルチコアのスコアだけを見れば、その端末がコアをどれだけ効率よく使えているかがわかることです。注意点は、2つの数字を並べて「マルチコアのほうが良いスコアだ」と結論づけてはいけないことです。2つは別々の問いに答えています。
- シングルが高い:1ステップずつ進める作業が速い。普段の反応の良さに効く。
- マルチが高い:分割して並列に実行できる作業が速い。動画変換やバッチ処理に向く。
- 倍率が低い:コア数が少ない、ブラウザーが使うWorkerが少ない、熱や電力の制限でコアが自由に動けない、などの可能性がある。
この倍率には注意が必要です。ブラウザーが使うWorkerの数や同期の仕方に左右されるため、物理的なコア数やクロック周波数にそのまま換算しないでください。暗号化や圧縮のAPIが使えない環境では、該当するテストはスキップされます。結果画面の詳細情報には、論理コア数と、その測定で使ったマルチコア用Workerの数が表示されます。
メモリ:スループットとレイテンシーは別の話
メモリのカテゴリーは、2つの点を合わせて見ます。連続した16MBの領域を読み書き・コピーしたときのスループットと、予測しにくいアクセスの連鎖をたどってデータに到達するときのレイテンシー(遅延)です。スループットの単位はGB/sで、高いほど良好です。ランダムアクセスのレイテンシーの単位はnsで、低いほど良好です。
スループットは、大きな画像や動画の編集、多数のタブを開いたままの使用、ゲームの読み込みなど、大量のデータを動かす作業に表れます。あちこちに散らばったデータを飛び回る作業は、レイテンシーの影響をより受けます。片方の数字が良くてもう片方が悪いことは十分にあり得るので、別々に読んでください。
レイテンシーのテストは、触れる領域のサイズを変えながら繰り返します。領域が小さいうちはデータがCPU内部の高速なキャッシュに収まるため、レイテンシーは低いままです。領域がキャッシュを超えると、より遅いメモリにアクセスすることになり、レイテンシーが上がります。曲線が折れ曲がる地点が、おおよそキャッシュの階層の境目です。クイック測定では代表的な2つのサイズしか測らないので、曲線の全体は標準測定で確認できます。
よくある誤解ですが、これは搭載しているメモリの量を測るものではありません。メモリ不足でディスクに退避してしまう状況も、このテストの対象外です。容量は仕様書で確認し、このスコアはメモリがデータをやり取りする速さの目安として見てください。
GPU描画とGPU計算:描く力と、計算する力
GPUは2つに分けて測定します。GPU描画は、大量の三角形、131,072個のパーティクル、ブルームやぼかしのポストプロセスを画面外で描画し、平均FPSを報告します。Webゲームや3Dマップ、エフェクトの多いページがどれだけ滑らかに動くかに関係します。画面には何も表示しないので、モニターのリフレッシュレートが結果の上限にならず、GPUが実際にどれだけ処理をこなしたかがわかります。
GPU計算は、描画ではなく計算をGPUに任せたときの性能を測ります。f32とf16の行列乗算、画像の畳み込み、パーティクルシミュレーション、並列合計を実行し、出力バッファが正しいかどうかも検証します。ブラウザー上での動画処理やAI推論のような、並列処理の多い作業にいちばん近い指標です。行列乗算はGFLOPS、その他は1秒あたりの処理要素数で表示され、いずれも高いほど良好です。
描画のスコアは良いのに、計算のスコアが低い、あるいは出ないことがあります。GPUのテストはWebGPUを優先し、使えない場合は描画テストだけがWebGL2に切り替わります。計算テストにはWebGPUが必要で、f16の行列テストはshader-f16機能に対応している場合にのみ実行されます。WebGPUの結果とWebGL2の結果を同じ列で比べると誤解のもとになるため、まず両方が同じグラフィックス経路を使ったかを確認してください。スキップされたテストは、結果画面に理由が表示されます。
ブラウザーとストレージ:Webの体感と、ファイルの体感
ブラウザーのカテゴリーは、DOM操作とレイアウト、Canvas 2Dの描画、画面のリフレッシュとフレームの安定性を測ります。複雑なWebアプリを開いたときの反応や、スクロールやアニメーションの滑らかさといった日常の印象に直結します。DOMとCanvasは1秒あたりの演算回数で高いほど良好、フレーム間隔はmsで低いほど良好です。
このカテゴリーは、ハードウェアだけでなく、ブラウザーエンジンやディスプレイ設定にも大きく左右されます。同じ端末でもブラウザーが変わればスコアが変わり得るので、必ず同じブラウザーの中で比較してください。
ストレージは、ブラウザーのOPFS(オリジンプライベートファイルシステム)に一時ファイルを作り、シーケンシャルライト、シーケンシャルリード、ランダムライト、ランダムリードを測定して、終わったらファイルを削除します。大きなファイルのダウンロードや、オフラインアプリのデータの読み込みに関係します。単位はMB/sで、高いほど良好です。ブラウザーがOPFSに対応していない場合や、プライバシーモードでブロックされている場合、このカテゴリーはスキップされます。
ストレージは総合スコアの中で最も小さい重み(4.25%)です。ストレージのスコアが低くても総合スコアはあまり動きませんが、一日中大きなファイルを扱う人にとっては、いちばん重要なカテゴリーかもしれません。重みは総合スコアへの影響度を表すもので、あなた自身の用途での重要度を表すものではありません。
AI推論:任意なので扱いが異なります
AI推論は任意の項目で、モデルのダウンロードに同意した場合にのみ実行されます。決まったテスト用の文章や画像をブラウザー内のモデルに入力し、テキスト生成や画像モデルがどれだけ速く動くかを調べます。個人のファイルには一切触れません。端末上のAI機能がどれだけ快適に動きそうかの目安で、速度の値が高いほど良好です。
同意しなければ実行されず、総合スコアからも除外されます。AIを含む結果と含まない結果は計算式のバージョンが異なり(AI込みはv4-ai)、直接比較できません。結果画面でAIカテゴリーが「未測定」と表示されていても、エラーではありません。オプトインしていないというだけのことです。
WebGPUが使えない場合、AIはWASM経路に切り替わり、結果にもその旨が別に表示されます。WASMはCPUで計算するため、同じ端末でもずっと遅くなることがあります。これは実行経路の違いであり、故障ではありません。AIの結果は、両方が同じ経路・同じ精度だったときにだけ比較してください。
強み・弱みと棒グラフの読み方
結果画面には「強み:X · 相対的な弱み:Y」という行が表示されます。強みは測定できたカテゴリーのうち最もスコアが高いもの、弱みは最も低いものです。大事なのは「相対的」という言葉です。弱みの表示は、その分野が悪いと言っているわけではありません。この端末の中で、他のカテゴリーと比べてそのカテゴリーがいちばん低かった、という意味です。全体的に優秀な端末でも、弱みの行は表示されます。
カテゴリーの棒グラフには、知っておきたい点が1つあります。棒の長さは、最高スコアに対する比率の平方根で描かれます。スコアが100倍違っても、棒の長さの違いは10倍に見えます。CPUマルチコアのようなカテゴリーのスコアが非常に高いときに、他の棒が細い線のように縮んでしまうのを防ぐためです。各棒の横の数字が実際のスコアです。
- 全体のバランスは棒で判断し、正確な差は棒の横の数字で確認しましょう。
- 棒の長さが半分でも、スコアが半分とは限りません。平方根のスケールのため、スコアはそれよりずっと低い場合があります。
- 棒がなく「除外」または「未測定」と表示されたカテゴリーは、非対応か、選択されなかったことを示します。スコアがゼロという意味ではありません。
スコアが参考値である理由と、端末の比較のしかた
Web Benchはブラウザーの中で動きます。そのため、同じ端末でも、ブラウザーとそのバージョン、電源モード、発熱、バックグラウンドのアプリ、タブが前面にあるかどうかによってスコアが変わります。スコアはハードウェアの等級を保証するものではありません。その環境、その時点で、端末がどれだけ速かったかを示すものです。結果画面が、ブラウザー・電源モード・発熱によって変わる参考値と表示しているのはそのためです。
2台の端末や、昨日と今日の結果を比べるときは、いくつかの習慣を守ると、読み取りの信頼性がぐっと上がります。
- 同じ計算式バージョンの結果どうしを比較する。計算式が変わると比較キーも変わり、結果が混ざらないようになっています。たとえば、v4のCPUマルチコアのスコアは以前のバージョンよりはるかに大きいため、バージョンが異なる結果は直接比較できません。
- 同じ測定の種類で比較する。クイック測定(約30秒)と標準測定(約2〜3分)では、実行するテストの数が違います。
- ブラウザー、GPU経路(WebGPUかWebGL2か)、AI経路が一致しているか確認する。有効なテストの構成が同じ結果どうしを比べるのが原則です。
- ノートPCでは、電源に接続しているかどうかと電源モードをそろえる。開始前に他のアプリを閉じ、測定中はタブを前面に表示したままにする。
- 1回の結果だけで結論を出さない。同じ条件で2〜3回測定して、ばらつきの範囲を見る。数%程度の差はノイズとして扱うのが安全です。
小さな差は気にせず、大きく違うカテゴリーに注目しましょう。2台のシングルコアのスコアが近いのにマルチコアが大きく違うなら、コアの活用のしかたに差があります。GPU計算のスコアだけが極端に違う場合は、まずGPU経路と対応機能を確認してください。
高負荷が続いても性能を保てるかどうかは、ストレステスト(5分または10分)で別に確認できます。ストレスのスコアは標準測定とは別で、サーマルスロットリングは温度センサーの値ではなく、性能の低下から推定します。
Web Benchはブラウザーで動作し、インストールもサインインも不要です。測定は端末上で行われ、ランキングへの参加に同意しない限り、結果がサーバーに送信されることはありません。まずは約30秒のクイック測定で大まかな状況をつかみ、もっと詳しく知りたくなったら標準測定に進みましょう。結果が出たら、この記事を開いたまま、総合スコア、シングルとマルチの差、強みと弱みの行を順に見ていってください。端末の個性が見えてくるはずです。
